300年以上の長きにわたり、芸術的な名品を創り続けてきた、国立マイセン磁器製作所―。膨大な量の資料と原型をもとに毎年発表される復刻作品や新作は、すでにコレクターの間で確固たる評価と地位を得るに至っています。 芸術品と呼ぶにふさわしい作品群からは、マイセンの高い技術と伝統が伝わってきます。
今回は、マイセンの2015年世界限定作品の中から、小箱「グレーハウンド」をご紹介します。
小箱「グレーハウンド」*世界限定75点
クッションの上でまどろんでいた犬。突然目をさまし、次の瞬間には跳ね上がりそうです。彼は磁器の小箱の中に入れられている宝物を守っています。ヨハン・ダニエル・シェーネ(1767-1843) は、1783年からマイセンで造形家として活躍し、ヨーロッパ啓蒙主義芸術のマイスターとされています。シェーネは、この作品で緊張と弛緩の間の一瞬を見事に捉え、小さな磁器像に生き生きとした魅力を与えることに成功しました。彼は犬の習性も良く知っていたようです。1833年に作られたこの小箱は、ヨハン・ヨアヒム・ケンドラー (1706-1775)が、約80年前にロシアのグリゴリー・オルロウ伯爵の注文によって作り上げたグレーハウンド像を思い起こさせます。中世の昔から、ロシアのグレーハウンドであるボルゾイ犬は、ロシア皇帝の宮廷で大変愛好されていました。18世紀には、グレーハウンドの群れを駆って、ロシアの貴族たちは深い森で狩猟をおこなっていたのです。オルロウは、1776年、ケンドラーに彼の愛犬を作らせました。また、エカテリーナ女帝(1729-1796)のためにも、マイセンはさまざまな作品を作りました。ヨハン・ダニエル・シェーネのモデルになったのが具体的にどんな犬であったのかは伝わっていません。しかし、軽くそばだてられた耳、鼻づらの様子、交差した前足など、シェーネの描写は自然で真に迫っています。純金で縁取られたクッションもさることながら、繊細な絵付が、この小さな彫像の魅力を際立たせています。サイズ:約10×20.5×14cm、商品番号:78987/900384