幸福の象徴、人形「パゴダ」をご紹介します。
頭と手がゆるやかに動く「パゴダ」。頭はうなずくように前後に動き、手は手招きするように動く珍しい人形です。
この東洋人のような個性的な作品の原型は1740年、ヨハン・ヨアヒム・ケンドラーとヨハン・フリードリヒ・エベラインという
初期のマイセンの天才的な造形家によって作られました
本来、パゴダとは仏塔のことですが、18世紀中頃に中国趣味(シノワズリー)がもてはやされた頃のヨーロッパでは、
東洋を象徴する建築物を表すと考えられていました。
この人形が典型的な東洋のイメージを表現していたために「パゴダ」の名称がつけられたとされています。
衣装の絵付は天才的な絵付師、ヨハン・グレゴリウス・ヘロルトが「インド文様」と呼ばれる東洋的な柄を考案しました。
また恰幅のよいお腹には、中国から伝わった布袋様の人形にも影響を受けたというその片鱗を見ることができます。
神聖ローマ帝国のプロイセン王、フリードリッヒ2世は特にこの人形を好み、マイセンに10体以上注文して、
それらは現在もドイツのサンスーシー宮殿に展示されています。
「憂いがない」という意味の「サンスーシー(無憂宮)」は、王の夏の離宮として1747年に建てられました。
ヴェルサイユ宮殿にも匹敵するロココ様式の宮殿で、「音楽の間」や中国式のあづまやなど、
趣味豊かな王を彷彿とさせる作りとなっています。
特に福々しいこの人形は「憂いを晴らす」のに最適だったようです。
(*人形「パゴダ」は作られた時により衣装の色・柄が異なり、サイズも数種あります。)
MEISSENメモ(89):愛らしい脚付の卵型ボックスのご紹介
愛らしい脚付の卵型ボックスをご紹介します。
18世紀から宮廷の貴婦人たちに愛好されてきた由緒あるボックス。
この愛らしい脚付の卵型ボックスは、
1850年頃に、アーティスト、エルンスト・アウグスト・ロイテリッツによって原型が作られました。
過去の芸術様式を創作の源とした彼は、この作品ではロココ様式に倣いました。
つぼみの形をした蓋のつまみや、優雅な曲線を描く猫脚が特徴的なこの卵型のボックスは、
小さいながらも完成されたフォームによって独特の存在感を醸し出しています。
エルンスト・アウグスト・ロイテリッツ
19世紀の革新的指導者。
1849年から1886年までの37年間にわたり、
マイセン磁器製作所の造形部門の責任者を務めました。
マイセンの古典的なフォームに注目し、さまざまな時代様式を組みあわせて、
新たなスタイルを生み出しました。
彼はロココ様式の復興と共に製作所のアーカイブをも甦らせました。
マイセンの古文書資料館には実に320の原型が、ロイテリッツの名前とともに記録されています。
製作所が再び世界的な名声を得る契機となった1855年のパリ万博をはじめ
数々の万国博覧会への参加も彼の主導で行われました。
MEISSENメモ(88):アーティスト、デトレフ・リッターのご紹介
アーティスト、デトレフ・リッターをご紹介します。
1961年マイセン生まれ。
幼い頃から自然観察に親しみ、絵を描く仕事に興味をもっていました。
1977年から4年間、マイセン磁器製作所付属の養成学校で学び、
鳥・魚・野生動物の絵付を専門に習得。
1999年からは製作所の開発部門で絵付師・造形家として活躍し、現在に至っています。
2000年には駐日ドイツ大使館の展示会で
プラークとユニカート(一点物)作品を発表しました。
動物を解剖学的に研究し、フィールドワークでは動物の行動を年月をかけて観察。
細密なものから、印象派のようなデザインまで、その作風は多岐にわたります。
「道端の小さなものにも敬意を払い、心と魂を込めて、自然の世界を再現したい」と
語っています。