現代マイセンの造形を代表するアーティスト、シュトラングをご紹介します。
昨年末に残念ながらアーティスト、ペーター・シュトラングが86歳で天に召されました。
今回は、マイセンに偉大な功績を遺したシュトラングについて改めてご紹介します。
ペーター・シュトラング(1936-2022)
ドレスデン生まれ。
14歳でマイセン養成学校に入り人形制作者になる教育を受け、
その後ドレスデン造形芸術大学で彫塑を学びました。
シュトラングは学位を取得した造形家としてマイセン製作所に戻り、
1993 年から芸術部門の責任者、主任造形家として活躍しました。
1960 年からはマイセン製作所の未来を担う
「芸術の発展を目指すグループ」の一員として、
30 年間にわたり製作所での芸術の基準を作りました。
2000 年、これまでの芸術作品が高く評価され「ザクセン州功労賞」を、
そして2007 年には「連邦功労十字章」を得ました。
特にシュトラングが考案した手法「手びねり」は、
伝統的な人形制作とは異なり石膏型をほとんど使用しないで作り上げられます。
磁土をこねて手で自由に作られる「手びねり」による人形は、
ユーモラスで豊かな表情と、一品一品味わいが異なることが魅力です。
シュトラングは、グリム童話など文学作品やサーカスなどのテーマを好み、
そのオリジナリティーあふれる作品には、人間に向けられた彼のあたたかいまなざしが感じられます。
「猿の楽隊」
18世紀半ばにマイセンの天才造形家、ヨハン・ヨアヒム・ケンドラーが生み出した「猿の楽隊」を
シュトラングならではの新しい解釈で「手びねり」という新しい手法で作り上げました。
そうすることで人形の小さな特徴や個性を生き生きと表現しました。
豪華な衣装ではないものの、青・赤・黄の基本色がオーケストラ全体を調和がとれたものにしています。
茶目っ気のある表情で多くのコレクターの人気を博しました。
「ガーディナー」シリーズ
18世紀に生まれたマイセンの人形「庭師」(ガーディナー)。
このマイセン伝統のテーマを3世紀の時を経て、シュトラングが独自の手法で表現し
誕生した「庭師」(ガーディナー)シリーズです。
ガーディナーの女の子と植木鉢、ガーディナーの男の子とブドウ/高さ約18~19.3cm
童話をテーマにしたシリーズ
物語を象徴するアイテムをデフォルメしたほのぼのとした可愛らしい人形です。
左下から)赤ずきんちゃん、星の銀貨、赤ずきんちゃん/高さ約9~10cm
「天使の楽隊」シリーズ
さまざまな楽器を奏でる天使たち。金髪の巻き毛、のびやかな姿、うっとりとした顔つきなど、豊かな表情が魅力です。
シュトラング80歳記念作品「ピエロ」シリーズ
シュトラングの80歳(2016年)を記念して創作されたピエロのシリーズ。
サーカスのピエロたちを心の友とするシュトラングならではの愛情がこもった作品です。
MEISSENメモ(103):現代マイセンの造形を代表する
MEISSEN マイセン「Bフォーム」の新しい花柄のご紹介
マイセン「Bフォーム」の新しい花柄をご紹介します。
「Bフォーム」と呼ばれるカップ&ソーサーのフォームは、
19世紀のマイセンに偉大な足跡を遺した造形家、ロイテリッツが、1855年に作り出したもので、
オリジナルの原型に付された認識番号から「Bフォーム」と名付けられました。
このシリーズは、マイセン磁器が王侯貴族だけのものではなく、市民階級の富裕層に広まっていった19世紀に作り上げられ、
典型的な歴史主義のデザインであり、バロックやロココ様式など過去の様式の要素が自由に用いられているのが特徴です。
また金彩で仕上げることで当時のブルジョワ層の人気を博しました。
「散らし小花」が描かれたものが有名ですが、今回デイジーと忘れな草との小花が描かれた作品が登場しました。
ブルー:カップ&ソーサー&プレート「忘れな草」。品番:23A078/15501/15582/2P
ロイテリッツ
(1818-1893)
エルンスト・アウグスト・ロイテリッツ
Ernst August Leuteritz
19世紀の革新的指導者。
1849年から1886年までの37年間にわたり、
マイセン磁器製作所の造形部門の責任者を務めました。
マイセンの古典的なフォームに注目し、さまざまな時代様式を組みあわせて、
新たなスタイルを生み出しました。
彼はロココ様式の復興と共に製作所のアーカイブをも甦らせました。
マイセンの古文書資料館には実に320の原型がロイテリッツの名前とともに記録されています。
製作所が再び世界的な名声を得る契機となった1855年のパリ万博をはじめ、
数々の万国博覧会への参加も彼の主導で行われました。
MEISSENメモ(97):絵付「レッドドラゴン」のご紹介
絵付「レッドドラゴン」をご紹介します。
マイセンの絵付にはさまざまな「象徴」が隠されており、
その絵付の一つ「レッドドラゴン」は
1730年頃に中国から伝わってきた図柄がもとになっています。
外側のドラゴンは皇帝のシンボルであり、
「鱗をもつ360の動物の最初のもの」「四代珍獣のひとつ」と
いわれています。
中央の鳳凰は皇帝と皇后の富と権力のシンボルであり、
円を描いて「永遠」を表わしています。
それに対し左右の「宝」の象徴は静止し、ドラゴンの動きを遮っています。
動と静がひとつのプレートの中で絶妙な均衡を保った絵付です。
さらに柄の配置には数の秘密が隠されており、
その絵解きも楽しんでいたようです。