MEISSENメモ(42):美術様式から見たマイセン磁器、「新古典主義様式」のご紹介
美術様式から見たマイセン磁器、「新古典主義様式」のご紹介をします。
設立以来、時代ごとに新しい様式を取り入れてきたマイセン。その作品群は、約23万種類にのぼり「様式の宝庫」ともいわれています。今回は、「新古典主義様式」を取り入れたマイセンの作品をご紹介します。「新古典主義」は、18世紀半ばから19世紀にかけて、ロココ様式の反動のように生まれた、禁欲的で古典的な様式です。古代ギリシア・ローマ時代に完成された理想美を模範とし、秩序と格調の高い雰囲気が特徴。マイセンでは、ギリシャ神話や天使をモチーフにした人形や群像をはじめ、通称「ワインリーヴ」とよばれ、皆様にも親しまれている絵柄「常緑のぶどうの輪飾り」シリーズや、「様式的な花柄」シリーズなどがつくられました。
群像「愛の勝利」
原型は1786年、クリスティアン・ゴットフリート・ユヒトツァー(Christian Gottfried Juechtzer 1752~1812)によって作られました。彼の作品は他にも「友情の捧げもの」や「愛のレッスン」などがあり、新古典主義の代表的な造形家ということができるでしょう。たおやかな女性が美しい花綱で手をゆわえられ、愛の虜になったことを表しています。花で綱をつくり、人形の装飾にする手法は、マイセンの得意とするところですが、この群像では特にその技巧が冴え、華麗な作品となっています。(商品番号:73540/900300、高さ:約38cm)
群像「三美神」
この群像もユヒトツァーによって、1784年に考案され、1820年に制作されました。ギリシャ神話をモチーフにした作品で、ゼウスの娘エウプロシューネー、アグライアー、タレイアを表しています。それぞれが「喜び」「輝き」「栄え」の化身で、ギリシア・ヘレニズム時代の手本に倣ってつくられ、神々や人間、また他の世界のあらゆるものに喜びを与えるとされています。ユヒトツァーは、衣装の流れるようなドレープを得意としました。また、見るものに語りかけるような表情の豊かさと優しい質感は、まるで磁器であることを忘れてしまうほど繊細です。(商品番号:73465/900300、高さ:約40cm)
左:天使像「私のお気に入り」
右:天使像「いやされる愛」
原型は1775年、フランス人造形家 ヴィクトール・ミッシェル・アシエによってつくられました。アシエはテーマの選択、成型、絵付のすべてにおいて、非常に優れた才能をもっていました。新古典主義の台座の上にいるキューピットには、テーマに従ってそれにふさわしい格言がフランス語でつけられ、「デヴィーゼンキント」とよばれました。感傷的、道徳的、諧謔的に人間の美徳をあらわした「デヴィーゼンキント」は、現代もなお根強い人気を博しています。アシエの作風はケンドラーの力強い造型とは対照的で、優美さと繊細さをもち、ケンドラーの後継者としての業績を今に伝えています。(左・商品番号:60208/900300、高さ:16cm、右・商品番号:60214/900300、高さ:15cm)
左:「ハートをノックする天使」
中:「恋の行方」
右:「スリッパを背負う天使」
1877年~1880年にかけて、造形家ハインリッヒ・シュヴァーベが創作しました。発想もユニークでマイセンらしいユーモアが感じられる逸品です。そもそも天使、エンジェルという言葉はギリシア神話の「アンゲロス」(メッセンジャー)という言葉に由来しています。神の言葉を携えて人間の世界にやってくる天使のイメージは美術の中でもひとつのジャンルを築きました。
(左・商品番号:70685/900300、高さ:15.5cm、中・商品番号:70680/900300、高さ:22cm、右・商品番号:70681/900300、高さ:17cm)
「ワインリーヴ」シリーズ
マイセンは、磁器の町となる遥か以前から、ワインの町でした。エルベ河の谷間の景色には、すでに800年頃からワイン畑が描かれています。ワイン栽培がマイセンの磁器装飾にも影響を与えたことは、ごく当然のことでした。すでに非常に古い、絵付されていない磁器の上にも、ワインの葉や蔓、房などの立体的な装飾がみられます。「ワインリーヴ」は、マイセン磁器の古典主義的ライン、1817年のアルンホルトによる「緑のぶどう文様」によって登場した絵柄です。釉下彩として酸化クロムの緑色をマスターしたという技術的な点、そしてその芸術的完成度の高さ、加えて新しい緑色のために、実に60もの試案の中から選び抜かれたこのワインリーヴ文様は、この装飾に不変の成功をもたらしました。それは、古典主義の時代精神に合ったというだけでなく、後の時代の人々にも、時を超越したエレガントな磁器として迎えられたのです。(絵柄番号:841501)
「様式的な花柄」シリーズ
花は古くから人間とかかわりがあり、特別な役割を果たしてきました。花は感情を伝えたり、比喩を具体的な形で表したりします。東洋の模倣から離れて、マイセンがドイツらしい作品をつくろうとした時、まず描かれたのは、当時流行していた木版画や銅版画からとられた精緻な花の姿でした。この花柄のシリーズは、そのスタイルをもっと様式化したもので、36のパターンをもち、ヨーロッパの人々が好む典型的な花が描かれています。パターンがある、といっても絵付師にはある程度自由に描くことが許されているため、これも厳密には「二つとない」ものといえるでしょう。(絵柄番号:040110)