MEISSENメモ(74):絵付「シノワズリー」のご紹介
磁器絵付用の顔料(絵具)を開発した天才的な絵付師、ヨハン・グレゴリウス・ヘロルトが確立した
絵付「シノワズリー」をご紹介します。
当時のヨーロッパ人にとって、どこにあるかもわからない
神秘的な世界であった中国の生活を描いたのが
「シノワズリー」です。
ヘロルトは17世紀後半に流行していた
旅行文学の銅板画による挿し絵を参考に、
自分たちとは反対の理想化した非現実的象徴として
描いています。
またヘロルトは1724~25年に、「ヘロルト・シノワズリー」の
何千という個々の場面を描いた細密画のスケッチブックを
完成させました。
そのオリジナルは今日ではライプツィヒの工芸博物館に
保管されていますが、マイセンはそれらを複写したものを保管し、
それを手本に描いています。
細密画の分野ではかなりの高度な技術を要するため、
マイセンのマイスターの中でも数人しか
描くことができません。
熟練された技術によってのみ描くことのできる細密画は、わずか3cmに満たないほどの人物像も非常に繊細に描かれています。
「シノワズリー」はヨーロッパ人にとって、ヘロルトが磁器絵画の中に実現させたこの世の幸福のユートピアであり、
現在でも私たちに当時の夢や華やかさと落ち着きを与えてくれる絵付だといえます。
なお、マイセンでは中国人を描いたものを「シノワズリー」と呼び、東洋調の動・植物を描いたものを「インド文様」としています。