MEISSENメモ(46):美術様式から見たマイセン磁器、「アール・ヌーヴォー」のご紹介
1710年の設立以来、時代ごとに新しい様式を取り入れてきたマイセン。その作品群は、約23万種類にのぼり「様式の宝庫」ともいわれています。今回は、「アール・ヌーヴォー様式」を取り入れたマイセンの作品をご紹介します。「アール・ヌーヴォー」は19世紀末にヨーロッパで流行した様式で、曲線が特色。マイセンでは新しい美術様式取り入れるべく、他の分野で活躍している芸術家を招聘し、この様式の習得と発展に努めました。パウル・ショイリッヒが制作した置時計や人形、ユリウス・コンラート・ヘンチェルの真骨頂である人形「子供シリーズ」などがあげられます。
*パウル・ショイリッヒ(1883-1945)
パウル・ショイリッヒは、自由に制作するアーティストとしてマイセン磁器製作所で活躍しました。作品保管庫に保存されているショイリッヒの制作モデル「102」という数字は、この作家とマイセン製作所の実りの多いつながりを示すだけでなく、20世紀初頭のショイリッヒが最も創造的であった期間を表しています。彼の彫像は、芝居がかっていて、エロティックで非常に効果的です。作品の「扇を持つ婦人」、「誘拐婦人と鹿」、「アマゾーネとキューピット」、そして「落馬する婦人」は、1937年のパリ万国博覧会でグランプリを受賞しました。磁器という素材を熟知し、内側から溢れるような力とダイナミックな表情をその彫像に与えたことが、ショイリッヒの真骨頂といえるでしょう。
*ユリウス・コンラート・ヘンチェル(1872-1907)
造形家。この時代の芸術家の中にはすでに他で名を成して、マイセンによばれた人が多くいましたが、ヘンチェルはマイセンに生まれ、マイセンの養成所で学んだ生粋のマイセン人。最も有名なのは子供シリーズです。子供のあらゆる姿、表情、しぐさの一つひとつを生き生きと的確にとらえ独自のスタイルを確立しました。愛らしく現代の服を着た天使のような子供たちは本当に見る人を元気づけます。当時すでに200年の伝統を持ち、クラシックな磁器を作り続けていたマイセン製作所に、文字どおり若々しい新風を吹き込んだと言える作品です。当時のマイセン新聞はこう伝えています-「マイセン磁器製作所は、現代の小像の分野において、特に人間描写の点で最も大きな、そして重要な貢献を果たしている。」
人形「身支度をする女性と天使」
マイセンにアール・ヌーヴォー様式の人形を数多くもたらしたパウル・ショイリッヒが、が1923年頃に原型を作った作品です。靴下留めを結んでいる女性と、それを覗き込んでいるキューピット。ユーモラスな題材と女性の曲線美、そして白磁との対比が見事な絵付などが特徴的です。(品番:73315/900100、高さ:25.3cm)
人形「扇をもつ婦人」
原型は1930年、パウル・ショイリッヒによって作られました。ショイリッヒの作品の中でも最も美しいラインを持つといわれています。1937年のパリ万国博覧会でグランプリを受賞。(品番:73322/900500、高さ:約47㎝)
人形「誘拐」
パウル・ショイリッヒの傑作の一つです。優雅な男女の姿と、様式的に表現された馬が見所です。1937年のパリ万国博覧会でグランプリを受賞。
時計
パウル・ショイリッヒが1918年に原型を作りました。男の子と女の子、二人のプットーが時計を持ち上げています。二人はこの大きな丸い時計を所定の位置に保つのに全身の力を使っています。二人の顔はお互いにとても似ていて、性差は見ただけではわかりません。クッションの上の足の組み方の違いが、この彫像のシンメトリーによる緊張を緩和しています。(品番:60830/900500、高さ : 約35cm)
ヘンチェルの人形「子供シリーズ」
原型は1900年の初めに、ユリウス・コンラート・ヘンチェルが生み出しました。
上:人形「犬と眠る子供」、大きな犬にもたれかかり、すやすやと眠る子供の姿が微笑みを誘います。(品番:73368/900300、高さ:8cm)
左:人形「棒遊びをする子供」、楽しそうに棒遊びをする子供。はずむ心が伝わってきます。(品番:73365/900100、高さ:18.5cm)
中:人形「人形を持つ少女」、あどけない表情や自然な姿態が大きな魅力となっています。(品番:73375/900100、高さ:16.5cm)
右:人形「木馬に乗る子供」、新聞紙で作った帽子を被り、木馬にまたがって無心に遊ぶ子供の姿が愛らしいです。(品番:73366/900100、高さ:17cm)
この他、「犬を見つめる子供」「子牛と子供」「人形と遊ぶ子供」「本を読む女の子」「絵本を見る子供」「ミルクを飲む子供」などたくさんの種類があります。
*マイセンの製品は、全国主要百貨店 でお求めいただけます。