文学をテーマにした作品をご紹介します。
マイセンには文学をテーマにした作品シリーズが数多くあります。
シェイクスピアの喜劇『真夏の夜の夢』をもとにした「サマーナイト」、
『千夜一夜物語』に想を得た「アラビアンナイト」、
ミュンヒハウゼン男爵の冒険譚『ほら吹き男爵の冒険』をモチーフにした「ほら吹き男爵」などです。
一方、文学作品の中でマイセンは特別なものとして描かれています。
『ゲーテの書簡』には、「廿日(はつか)火曜日は極めて快適な、見学の日だった。
中でもわし達は城に登って、真先に磁器工場を視察した。つまりその貯蔵室を見たのだ。」とあり、
トルストイの『戦争と平和』では、「ナターシャは器用に手早く選り分けはじめた。
『これはいらないわ。』彼女はキーエフ製の皿をさしてこう言った。『これは-いる、これは絨毯の中だ。』と
彼女はザクセン焼きの鉢をさして言った。」など、文豪たちが憧れをもってマイセンを描いています。
*出典
『ゲーテの書簡』:『ゲーテ全集』32巻 木村謹治訳 改造社より
『戦争と平和』:『戦争と平和』米川正夫訳 岩波文庫より
文学をテーマにした作品シリーズ
アラビアンナイト
「千夜一夜物語」に想を得てファンタジーを
自由に繰り広げていったものです。
このシリーズはヴェルナー教授の代表作であり、
現代マイセンの「古典」とも称されています。
現代マイセンが生んだ最高傑作のひとつである
「アラビアンナイト」の高い物語性と工芸性は、
見飽きることがありません。
ほら吹き男爵
本作品は、アーティスト、ペーター・シュトラングの
ユニカート(一点もの)です。
18世紀に実在したドイツのミュンヒハウゼン男爵の冒険譚
「ほら吹き男爵の冒険」の一場面に想を得ています。
空を飛び海を行くという男爵の姿が、
シュトラングらしくユーモラスに表現されています。
「ほら吹き男爵の冒険」をテーマとした作品は
ヴェルナー教授が現代マイセンにもたらした
「20世紀の細密画」といわれているシリーズもあります。
メルヘン人形6体セット
手びねりで知られるシュトラングによるデザイン。
子供の頃から親しんでいる楽しい童話の登場人物たちです。
「イバラ姫」(グリム)、「赤ずきんちゃん」(グリム)、「長靴をはいたネコ」(ペロー/ティーク)
「魔女」(グリム)、「ヘンゼルとグレーテル」(グリム)、「カエルの王様」(グリム)
群像「ドン・キホーテとサンチョ・パンサ」
スペインの作家ミゲル・デ・セルバンテスの小説
「ドン・キホーテ」の登場人物をテーマにした作品。
才能あふれるグラフィックアーティストであり
造形家のウィリー・ミュンヒ・ケー(1885~1960)による
ユーモラスな群像です。
オリジナルは1929年に作られました。
二人のキャラクターが見事に表現された逸品です。
人形「メッキーの結婚式」
劇作家ブレヒトの最高傑作「三文オペラ」の一場面が、マイセン磁器によって見事に再現されています。
暗黒街で繰り広げられるメッキー・メッサーとポリーの結婚式。
マイセンのアーティスト、シュトラング、ツェプナー、そしてヴェルナー教授の3人は、
ベルリンの劇場でこの「三文オペラ」を観て感動し、この作品をテーマに選んだといいます。
ブレヒトの夫人を実際に訪ねブレヒト自身が抱えていた情熱を聞くことで、作品への思いはさらに深まり、
現代マイセンのひとつの代表作ともいえる「メッキーの結婚式」が出来上がりました。
MEISSENメモ(85):群像「宮廷の恋人たち」シリーズのご紹介
群像「宮廷の恋人たち」シリーズをご紹介します。
18世紀にフランスで栄えた「ロココ様式」は、マイセンでも大流行し、
ドイツ人が憧れたフランス宮廷の雅びがマイセンにも持ち込まれました。
「宮廷の恋人たち」シリーズは優雅に広がるクリノリン・スカートから「クリノリン群像」とも呼ばれる人形。
原型は1744年に天才造形師、ヨハン・ヨアヒム・ケンドラーに(1706-1775)よって作られたものです。
ケンドラーは、細部まで繊細に形作れて、かつ細やかな絵付もできる理想的なサイズに仕上げています。
まさに小さな磁器彫刻の芸術です。
スカート(クリノリン)の豊かなひだや動きやそこに施された美しい花柄、胸元や袖口のフリルなども見所です。
*クリノリンとはスカートを膨らませるための釣り鐘型フレームのこと。
クリノリン(crinoline)はその素材となった馬の尻尾の毛「クラン(crin)」と麻布「ラン(lin)」を
合成した言葉といわれています。
MEISSENメモ(84):
マイセン磁器制作「炎のいたずら」のご紹介
マイセン磁器制作「炎のいたずら」をご紹介します。
マイセン磁器の製作は、磁土を形づくり900-950度で素焼きすることから始まります。
900度になるまで15時間、900-950度で30時間、そして15時間かけ徐々に冷ます工程が、
磁土にとって最初の「試練」であり、ここで仕上がったものが次の工程へ進みます。
下絵付(染付)の場合、素焼きしたものに絵付し、釉(うわぐすり)をかけ本焼成します。
本焼成は1450度になるまで15時間、1450度になってから30から72時間かけ、また15時間かけて徐冷します。
人形などの上絵付の場合は素焼きしたものに釉をかけて本焼成し、純白の生地を得てから絵付し、
さらに焼成します。3回目の焼成は約900度。
世界でも最高温による「焼成」は、技術的に最も困難な部分のひとつです。
炉(窯)の中では「炎のいたずら」によるさまざまなアクシデントが起こり、炉が開くまで誰にもわかりません。
中で起こる風はカップの取っ手を人形に飛ばし、立つはずのサギや馬が、
へなへなと膝をついてしまうこともあります。
気まぐれな「炎のいたずら」による事例をご紹介します。
300年以上にわたる職人たちの経験と実験によって、さまざまな対策が導き出されています。
しかし磁器の制作工程と自然の原料の予測不可能な点や、作品の複雑な構造や大きさのために、
時として作品は「炎のいたずら」によって思いもかけぬ姿で窯の中から現れるのです。