1710年の設立以来、時代ごとに新しい様式を取り入れてきたマイセン。その作品群は、約23万種類にのぼり「様式の宝庫」ともいわれています。今回は、「アール・デコ様式」を取り入れたマイセンの作品をご紹介します。「アール・デコ」は1910年代から30年代にかけて、フランスを中心にヨーロッパで流行した、幾何学的造形を取り入れた装飾様式です。マイセンでは大きな流れとはなりませんでしたが、マックス・エッサーの作品にアール・デコ様式の特徴がみられます。またこの頃、スイスやフランスの動物彫像の影響から、多くの動物彫像が生まれました。いずれも動物の姿態だけでなく、そこに宿る本性まで生き生きと表現しています。カワウソ、ウサギ、シカ、イヌ、シカなどがさまざまな動物が作られました。
彫像「エッサーによるヒョウ」*世界限定50点*
力強く堂々としたヒョウの姿です。頭を僅かに傾け、見る人の視線を拒んでいるようです。この微妙なニュアンスで、造形家マックス・エッサー(1885-1945)は、ネコ科特有の近寄り難く、同時に気分屋の風情で横たわるこの動物を完璧に表現しました。エッサーの彫像はアール・デコ様式の磁器芸術の傑作とされています。エッサーはヨハン・ヨアヒム・ケンドラー(1706-1775)が創り上げたマイセン動物彫像の伝統を1920年代に更なる頂点へと導きました。偉大な動物彫塑家、アウグスト・ガウル(1840-1910)に学んだ後、エッサーは1919年にマイセン製作所に入り、1923年、マイスターのアトリエの指導者となって1924年には教授の称号を得ています。彼の時代の多くの造形家のように、彼は動物彫像を手がけ、もしかしたら動物彫像の自由さと気軽さのゆえに、伝統や倫理に縛られた人間描写よりも優れた作品を生み出しました。しかしそのエッサーのヒョウ「ルパルドゥス」もそこから自由だったわけではありません。エッサーはこのヒョウを1920年代、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(1749-1832)の叙事詩「ライネケ狐」をテーマにした一大セットの一部として制作しました。その中でヒョウの「ルパルドゥス」は王家の腹心であり、一員で、狐の陰謀を見抜けません。叙事詩の中では余り重要でない役どころです。しかし高価なサーヴィスセットの彫像群を可能にした独自の演出によって、エッサーのヒョウは傑出した彫像として見事に大役を果たしています。(品番:78321/900584、サイズ:高さ17cm)
白磁彫像「カワウソ」
原型は、1931年にマックス・エッサーがつくりました。本作品は1937年にベトガー炻器という素材でパリ万博に出展され、グランプリを受賞しました。カワウソの一瞬の動きを捉えた名作として今日では炻器と白磁の両方で作られています。(品番:78713/000000、サイズ:高さ24.5cm)
白磁彫像「イタチ」
原型は、1926年にマックス・エッサーが作りました。イタチの一瞬の動きを捉えた名作として作られています。(品番:78710/000000、サイズ:高さ25cm)
彫像「ウサギ」
原型はマックス・エッサーによって作られました。装飾を極端なまでに排しながら、動物の本質を一瞬のうちに磁器の中に閉じ込めたとされる逸品です。(品番:78946/900500、サイズ:高さ12.5cm)
彫像「ヒョウ」
枝の上で虎視眈々と獲物を狙うヒョウは緊迫感に溢れ、細密に絵付されたその体は、ビロードのような毛並みまで表現しています。(品番:78934/900180、サイズ:縦18.5×横36×高さ28㎝)
彫像「ホッキョクグマ」
アール・デコ期の動物彫像の中でも、真に迫った造形で知られる「白熊」像です。オリジナルはアール・デコの造形家、ヤールによって1903年頃に作られました。白熊の重量感と毛の質感まで感じられる名作です。(品番:78793/900100、サイズ:高さ23×横幅51cm)
彫像「2匹のグレーハウンド」
アール・デコ期の偉大なアーティスト、オットー・ピルツ(1870-1934)が1910年に原型を作り、20世紀のマイセン動物彫像の傑作とされている作品です。グレーハウンドのしなやかな肢体と2匹が相戯れる様子が躍動感をもって表現されています。18世紀にはじまったマイセンの動物彫像は、動物の姿形だけでなく、そこに宿る野生の魂まで描くことで知られていますが、その伝統が20世紀においても受け継がれていることがわかる逸品です。(品番:78701/900180、サイズ:高さ26cm)
彫像「鹿」
アール・デコ期の優れた造形家、エーリッヒ・エーメが1938年に原型を作りました。硬質白磁が誕生する以前に生まれた赤茶色のベトガー炻器は、白磁が生まれるとすぐに作られなくなってしまいましたが、その優れた彫塑性から、アール・デコの時代に見直され、多くの優れた動物彫像が創作されて今日に至っています。本作品においても堂々とした牡鹿の姿が見事に表現されています。(品番:86157/000002、サイズ:高さ56cm)
*マイセンの製品は、全国主要百貨店 でお求めいただけます。
MEISSENメモ(46):美術様式から見たマイセン磁器、「アール・ヌーヴォー」のご紹介
1710年の設立以来、時代ごとに新しい様式を取り入れてきたマイセン。その作品群は、約23万種類にのぼり「様式の宝庫」ともいわれています。今回は、「アール・ヌーヴォー様式」を取り入れたマイセンの作品をご紹介します。「アール・ヌーヴォー」は19世紀末にヨーロッパで流行した様式で、曲線が特色。マイセンでは新しい美術様式取り入れるべく、他の分野で活躍している芸術家を招聘し、この様式の習得と発展に努めました。パウル・ショイリッヒが制作した置時計や人形、ユリウス・コンラート・ヘンチェルの真骨頂である人形「子供シリーズ」などがあげられます。
*パウル・ショイリッヒ(1883-1945)
パウル・ショイリッヒは、自由に制作するアーティストとしてマイセン磁器製作所で活躍しました。作品保管庫に保存されているショイリッヒの制作モデル「102」という数字は、この作家とマイセン製作所の実りの多いつながりを示すだけでなく、20世紀初頭のショイリッヒが最も創造的であった期間を表しています。彼の彫像は、芝居がかっていて、エロティックで非常に効果的です。作品の「扇を持つ婦人」、「誘拐婦人と鹿」、「アマゾーネとキューピット」、そして「落馬する婦人」は、1937年のパリ万国博覧会でグランプリを受賞しました。磁器という素材を熟知し、内側から溢れるような力とダイナミックな表情をその彫像に与えたことが、ショイリッヒの真骨頂といえるでしょう。
*ユリウス・コンラート・ヘンチェル(1872-1907)
造形家。この時代の芸術家の中にはすでに他で名を成して、マイセンによばれた人が多くいましたが、ヘンチェルはマイセンに生まれ、マイセンの養成所で学んだ生粋のマイセン人。最も有名なのは子供シリーズです。子供のあらゆる姿、表情、しぐさの一つひとつを生き生きと的確にとらえ独自のスタイルを確立しました。愛らしく現代の服を着た天使のような子供たちは本当に見る人を元気づけます。当時すでに200年の伝統を持ち、クラシックな磁器を作り続けていたマイセン製作所に、文字どおり若々しい新風を吹き込んだと言える作品です。当時のマイセン新聞はこう伝えています-「マイセン磁器製作所は、現代の小像の分野において、特に人間描写の点で最も大きな、そして重要な貢献を果たしている。」
人形「身支度をする女性と天使」
マイセンにアール・ヌーヴォー様式の人形を数多くもたらしたパウル・ショイリッヒが、が1923年頃に原型を作った作品です。靴下留めを結んでいる女性と、それを覗き込んでいるキューピット。ユーモラスな題材と女性の曲線美、そして白磁との対比が見事な絵付などが特徴的です。(品番:73315/900100、高さ:25.3cm)
人形「扇をもつ婦人」
原型は1930年、パウル・ショイリッヒによって作られました。ショイリッヒの作品の中でも最も美しいラインを持つといわれています。1937年のパリ万国博覧会でグランプリを受賞。(品番:73322/900500、高さ:約47㎝)
人形「誘拐」
パウル・ショイリッヒの傑作の一つです。優雅な男女の姿と、様式的に表現された馬が見所です。1937年のパリ万国博覧会でグランプリを受賞。
時計
パウル・ショイリッヒが1918年に原型を作りました。男の子と女の子、二人のプットーが時計を持ち上げています。二人はこの大きな丸い時計を所定の位置に保つのに全身の力を使っています。二人の顔はお互いにとても似ていて、性差は見ただけではわかりません。クッションの上の足の組み方の違いが、この彫像のシンメトリーによる緊張を緩和しています。(品番:60830/900500、高さ : 約35cm)
ヘンチェルの人形「子供シリーズ」
原型は1900年の初めに、ユリウス・コンラート・ヘンチェルが生み出しました。
上:人形「犬と眠る子供」、大きな犬にもたれかかり、すやすやと眠る子供の姿が微笑みを誘います。(品番:73368/900300、高さ:8cm)
左:人形「棒遊びをする子供」、楽しそうに棒遊びをする子供。はずむ心が伝わってきます。(品番:73365/900100、高さ:18.5cm)
中:人形「人形を持つ少女」、あどけない表情や自然な姿態が大きな魅力となっています。(品番:73375/900100、高さ:16.5cm)
右:人形「木馬に乗る子供」、新聞紙で作った帽子を被り、木馬にまたがって無心に遊ぶ子供の姿が愛らしいです。(品番:73366/900100、高さ:17cm)
この他、「犬を見つめる子供」「子牛と子供」「人形と遊ぶ子供」「本を読む女の子」「絵本を見る子供」「ミルクを飲む子供」などたくさんの種類があります。
*マイセンの製品は、全国主要百貨店 でお求めいただけます。
MEISSENメモ(45):美術様式から見たマイセン磁器、「自然主義」のご紹介
設立以来、時代ごとに新しい様式を取り入れてきたマイセン。その作品群は、約23万種類にのぼり「様式の宝庫」ともいわれています。
今回は、「自然主義様式」を取り入れたマイセンの作品をご紹介します。「自然主義」は19世紀後半の様式で、ありのままの自然の姿を忠実に再現するのが特徴です。マイセンでは、ユリウス・エデュアール・ブラウンスドルフ教授(1841-1922)に始まりました。1862年からマイセンの絵付師として活躍し、1890年にマイセンの養成学校の教授となったブラウンスドルフ。自然主義と印象主義の中間をいくようなタッチに特色があり、その微妙な色合いと流暢な筆の運びは、次代のマイセンに多大な栄光をもたらしました。花や果物を描いたプラークや花瓶、テーブルウェアなどがあります。
花瓶「自然主義の花絵付」*世界限定25点
マイセンに新古典主義の時代を拓いた造形家エルンスト・アウグスト・ロイテリッツのフォームに自然主義の手法で花を描きました。ロココの反動ともいえる新古典主義においては、厳格なギリシア・ローマ様式が尊ばれましたが、本作品では優しい趣の花絵付が新古典主義の厳格さを和らげているところに特色があります。(品番:50438/25A061、高さ:46cm)
蓋付花瓶「自然主義の手法による花と果物*世界限定25点
描かれている花と果物は自然主義の様式によるもので、息をのむほどの自然描写により、非常に芸術的な作品となっています。つぼみ、花びら、葉、それらは朝露をたたえ、炎をくぐったとは思えないほど瑞々しく繊細です。マイセン花絵付の集大成といえるでしょう。(品番:51114/25A059、高さ:53cm)
額装プラーク「自然主義のバラ」
ユリウス・エデュアール・ブラウンスドルフ教授が生み出した、自然主義の絵付技法を踏襲。絵画のようなデッサンや色彩に陰影をもたらす顔料の扱い方など高度で繊細な技法すべてに精通したマイスターだけが描ける名品です。(品番:58263/253601A、額装サイ:45×56cm)
「ヒルガオ」の花が描かれた、プレートとコーヒーカップ&ソーサー
「自然主義」という手法をもたらしたブラウンスドルフ教授の影響で生まれた絵柄です。白磁に白い花を描くことは至難の業と言われていますが、中でもこの「ヒルガオ」の花を描くには非常に高度な技術が必要です。水彩画を想わせるタッチが新鮮な作品です。(プレート/品番:252510/23501、径:18.5cm、コーヒーカップ&ソーサー/品番:252510/23582)
*マイセンの製品は、全国主要百貨店 でお求めいただけます。
<マイセンの養成学校について>
国立マイセン製作所の付属学校です。絵付師、ヨハン・グレゴリウス・ヘロルドが前身を作り、ザクセンの皇太子クサーヴァーが製作所直轄の学校として1764年に設立しました。以来、マイセンで働く人はごく少数の例外を除いて、全員この学校の出身者です。競争率は年によって異なりますが、平均15~20倍と狭き門となっています。養成学校の生徒たちは、手描きによる磁器絵付師の職を身につけるために自然をお手本にしています。鳥、果物、花のデッサンを繰り返すことによって、高い描写力が生まれるため、生徒たちは1年間全く磁器に触れることなく、ひたすらデッサンの修行を積みます。ここで3年半学び、成績がよければマイセンの製作所に入り、更に実習を続けることが許されます。
*「マイセン倶楽部」の会員様には毎年11月頃に、この養成学校の生徒たちが描いた作品をテーマにした「マイセンカレンダー」(有料)をご案内しております。
*「マイセン倶楽部」については、マイセンサイト「マイセン倶楽部」 をご覧ください。