群像「宮廷の恋人たち」シリーズをご紹介します。
18世紀にフランスで栄えた「ロココ様式」は、マイセンでも大流行し、
ドイツ人が憧れたフランス宮廷の雅びがマイセンにも持ち込まれました。
「宮廷の恋人たち」シリーズは優雅に広がるクリノリン・スカートから「クリノリン群像」とも呼ばれる人形。
原型は1744年に天才造形師、ヨハン・ヨアヒム・ケンドラーに(1706-1775)よって作られたものです。
ケンドラーは、細部まで繊細に形作れて、かつ細やかな絵付もできる理想的なサイズに仕上げています。
まさに小さな磁器彫刻の芸術です。
スカート(クリノリン)の豊かなひだや動きやそこに施された美しい花柄、胸元や袖口のフリルなども見所です。
*クリノリンとはスカートを膨らませるための釣り鐘型フレームのこと。
クリノリン(crinoline)はその素材となった馬の尻尾の毛「クラン(crin)」と麻布「ラン(lin)」を
合成した言葉といわれています。
MEISSENメモ(84):
マイセン磁器制作「炎のいたずら」のご紹介
マイセン磁器制作「炎のいたずら」をご紹介します。
マイセン磁器の製作は、磁土を形づくり900-950度で素焼きすることから始まります。
900度になるまで15時間、900-950度で30時間、そして15時間かけ徐々に冷ます工程が、
磁土にとって最初の「試練」であり、ここで仕上がったものが次の工程へ進みます。
下絵付(染付)の場合、素焼きしたものに絵付し、釉(うわぐすり)をかけ本焼成します。
本焼成は1450度になるまで15時間、1450度になってから30から72時間かけ、また15時間かけて徐冷します。
人形などの上絵付の場合は素焼きしたものに釉をかけて本焼成し、純白の生地を得てから絵付し、
さらに焼成します。3回目の焼成は約900度。
世界でも最高温による「焼成」は、技術的に最も困難な部分のひとつです。
炉(窯)の中では「炎のいたずら」によるさまざまなアクシデントが起こり、炉が開くまで誰にもわかりません。
中で起こる風はカップの取っ手を人形に飛ばし、立つはずのサギや馬が、
へなへなと膝をついてしまうこともあります。
気まぐれな「炎のいたずら」による事例をご紹介します。
300年以上にわたる職人たちの経験と実験によって、さまざまな対策が導き出されています。
しかし磁器の制作工程と自然の原料の予測不可能な点や、作品の複雑な構造や大きさのために、
時として作品は「炎のいたずら」によって思いもかけぬ姿で窯の中から現れるのです。
MEISSENメモ(83):
トップアーティスト、ホルスト・ブレッチュナイダーのご紹介
マイセンのトップアーティスト、ホルスト・ブレッチュナイダーをご紹介します。
プロフィール
1952年 ヤーナに生まれる
1968年 10年間の義務教育を終了
1968年~1972年 国立マイセン磁器製作所で磁器絵付師として修業を積む
1972年 花と果物柄の絵付師として、養成学校を「優」で卒業
1972年~1978年 果物画の絵付師として活動
1979年 「芸術の発展をめざすグループ」のメンバーとなる
1979年~1995年 数多くの絵画をもとに磁器プラークへの絵付を行い、 また多くの特別制作を行う
1985年 磁器による壁面装飾の構想・制作部門を担当し、
ハインツ・ヴェルナー教授、フォルクマール・ブレッチュナイダーとともに活動する
1986年~1996年 「エキゾチックな水辺の花」など、ルードヴィッヒ・ ツェプナー作のフォーム
「グローサー・アウスシュニット」にさまざまな絵付を行う
現在では後進の指導を行う傍ら、独自の手法によって芸術性の高い限定作品やユニカートにその名を残しています
2016年に来日した折に、ホルスト・ブレッチュナイダー氏に行った
ショートインタビューを「マイセンサイト」でご覧いただけます。
>>マイセンサイト