プラークとは「磁板画」のことです。磁器をキャンバスに見立てたかのような筆致は、時に「焼物」の常識を超え、絵画のそれに等しいほどです。マイセンでは、名画を磁器の上に再現する、という形で1753年から作られてきました。炎をくぐる焼物に、窓辺の光、花や果物のみずみずしさを再現するのは至難の技です。しかしマイセンではこの試みに果敢に挑戦してきました。そして、1960年に設立された「芸術の発展をめざすグループ」のアーティストたちによってドラマチックな発展を遂げ、まるで磁板が布製のキャンバスでもあるかのように、自由自在に絵を描き、独自の作品世界を展開しました。プラークには、マイセンが得意とするテーマ、「四季」があります。今回はその中で「冬」を表現した作品をご紹介します。雪景色をはじめ、冬の風物詩のホオズキや松などをモチーフに描いた作品は、この季節に楽しみたいプラークです。
*「芸術の発展をめざすグループ」について
戦後のマイセンを復興させるべく1960年に結成された集団です。設立メンバーは、ハインツ・ヴェルナー、ルードヴィッヒ・ツェプナー、ペーター・シュトラング。後にルディ・シュトレ、フォルクマール・ブレッチュナイダーが加わりました。この活動は後継のアーティストたちによって今も続けられています。
プラーク「冬」
1987年、現代マイセンの重鎮 ハインツ・ヴェルナー教授によってつくられました。ヴェルナー教授の作品らしいメルヘンチックな風景は見るものを優しい気持ちにさせます。(商品番号:9M103/933017、サイズ:34×34cm)
プラーク「冬」
この絵のモチーフ、町のシンボルであるライプツィヒ大学は、旧東独時代にはカール・マルクス大学と呼ばれ、この町だけではなく、ドイツの学問を代表する存在でした。古い教会と共に描くことで数百年の歴史をもつ古都の新旧の顔を抜き出しています。(商品番号:9M113/933005、サイズ:26×26cm)
プラーク「冬の花束」
現代マイセンのトップアーティストの一人、ホルスト・ブレッチュナイダーのデザインです。クリスマスローズを中心にした冬の花を白を基調に描きました。顔料を塗り重ねて独特の効果をあげています。(商品番号:9M105/932017、サイズ:22×22cm)
プラーク「冬」
アーティスト、ザビーネ・ワックスがデザインしました。豊かな抒情性が魅力です。(商品番号:9M769/933013、サイズ:15.5×15.5cm)
プラーク「冬」
ブレッチュナイダーが2012年に60歳になったことを記念してつくられた四季をテーマにしたプラークの4枚セット。この作品はその中の「冬」です。(商品番号:96210/932218A、額装サイズ:31×25.5cm)
プラーク「四季の花(冬)」
冬の風物詩として親しまれている「ホオズキ」と厳しい冬を乗り越える「松」。「松」は日本同様、ドイツでも幸福と長寿の象徴とされています。(商品番号:58350/255001WA、額装サイズ:31×26cm)
MEISSENメモ(42):美術様式から見たマイセン磁器、「新古典主義様式」のご紹介
美術様式から見たマイセン磁器、「新古典主義様式」のご紹介をします。
設立以来、時代ごとに新しい様式を取り入れてきたマイセン。その作品群は、約23万種類にのぼり「様式の宝庫」ともいわれています。今回は、「新古典主義様式」を取り入れたマイセンの作品をご紹介します。「新古典主義」は、18世紀半ばから19世紀にかけて、ロココ様式の反動のように生まれた、禁欲的で古典的な様式です。古代ギリシア・ローマ時代に完成された理想美を模範とし、秩序と格調の高い雰囲気が特徴。マイセンでは、ギリシャ神話や天使をモチーフにした人形や群像をはじめ、通称「ワインリーヴ」とよばれ、皆様にも親しまれている絵柄「常緑のぶどうの輪飾り」シリーズや、「様式的な花柄」シリーズなどがつくられました。
群像「愛の勝利」
原型は1786年、クリスティアン・ゴットフリート・ユヒトツァー(Christian Gottfried Juechtzer 1752~1812)によって作られました。彼の作品は他にも「友情の捧げもの」や「愛のレッスン」などがあり、新古典主義の代表的な造形家ということができるでしょう。たおやかな女性が美しい花綱で手をゆわえられ、愛の虜になったことを表しています。花で綱をつくり、人形の装飾にする手法は、マイセンの得意とするところですが、この群像では特にその技巧が冴え、華麗な作品となっています。(商品番号:73540/900300、高さ:約38cm)
群像「三美神」
この群像もユヒトツァーによって、1784年に考案され、1820年に制作されました。ギリシャ神話をモチーフにした作品で、ゼウスの娘エウプロシューネー、アグライアー、タレイアを表しています。それぞれが「喜び」「輝き」「栄え」の化身で、ギリシア・ヘレニズム時代の手本に倣ってつくられ、神々や人間、また他の世界のあらゆるものに喜びを与えるとされています。ユヒトツァーは、衣装の流れるようなドレープを得意としました。また、見るものに語りかけるような表情の豊かさと優しい質感は、まるで磁器であることを忘れてしまうほど繊細です。(商品番号:73465/900300、高さ:約40cm)
左:天使像「私のお気に入り」
右:天使像「いやされる愛」
原型は1775年、フランス人造形家 ヴィクトール・ミッシェル・アシエによってつくられました。アシエはテーマの選択、成型、絵付のすべてにおいて、非常に優れた才能をもっていました。新古典主義の台座の上にいるキューピットには、テーマに従ってそれにふさわしい格言がフランス語でつけられ、「デヴィーゼンキント」とよばれました。感傷的、道徳的、諧謔的に人間の美徳をあらわした「デヴィーゼンキント」は、現代もなお根強い人気を博しています。アシエの作風はケンドラーの力強い造型とは対照的で、優美さと繊細さをもち、ケンドラーの後継者としての業績を今に伝えています。(左・商品番号:60208/900300、高さ:16cm、右・商品番号:60214/900300、高さ:15cm)
左:「ハートをノックする天使」
中:「恋の行方」
右:「スリッパを背負う天使」
1877年~1880年にかけて、造形家ハインリッヒ・シュヴァーベが創作しました。発想もユニークでマイセンらしいユーモアが感じられる逸品です。そもそも天使、エンジェルという言葉はギリシア神話の「アンゲロス」(メッセンジャー)という言葉に由来しています。神の言葉を携えて人間の世界にやってくる天使のイメージは美術の中でもひとつのジャンルを築きました。
(左・商品番号:70685/900300、高さ:15.5cm、中・商品番号:70680/900300、高さ:22cm、右・商品番号:70681/900300、高さ:17cm)
「ワインリーヴ」シリーズ
マイセンは、磁器の町となる遥か以前から、ワインの町でした。エルベ河の谷間の景色には、すでに800年頃からワイン畑が描かれています。ワイン栽培がマイセンの磁器装飾にも影響を与えたことは、ごく当然のことでした。すでに非常に古い、絵付されていない磁器の上にも、ワインの葉や蔓、房などの立体的な装飾がみられます。「ワインリーヴ」は、マイセン磁器の古典主義的ライン、1817年のアルンホルトによる「緑のぶどう文様」によって登場した絵柄です。釉下彩として酸化クロムの緑色をマスターしたという技術的な点、そしてその芸術的完成度の高さ、加えて新しい緑色のために、実に60もの試案の中から選び抜かれたこのワインリーヴ文様は、この装飾に不変の成功をもたらしました。それは、古典主義の時代精神に合ったというだけでなく、後の時代の人々にも、時を超越したエレガントな磁器として迎えられたのです。(絵柄番号:841501)
「様式的な花柄」シリーズ
花は古くから人間とかかわりがあり、特別な役割を果たしてきました。花は感情を伝えたり、比喩を具体的な形で表したりします。東洋の模倣から離れて、マイセンがドイツらしい作品をつくろうとした時、まず描かれたのは、当時流行していた木版画や銅版画からとられた精緻な花の姿でした。この花柄のシリーズは、そのスタイルをもっと様式化したもので、36のパターンをもち、ヨーロッパの人々が好む典型的な花が描かれています。パターンがある、といっても絵付師にはある程度自由に描くことが許されているため、これも厳密には「二つとない」ものといえるでしょう。(絵柄番号:040110)
MEISSENメモ(41):美術様式から見たマイセン磁器、「ロココ様式」のご紹介
美術様式から見たマイセン磁器、「ロココ様式」のご紹介をします。
設立以来、時代ごとに新しい様式を取り入れてきたマイセン。その作品群は、約23万種類にのぼり「様式の宝庫」ともいわれています。今回は、「ロココ様式」を取り入れたマイセンの作品をご紹介します。18世紀の前半からルイ15世時代(1715~1774)にかけてフランスで栄えた「ロココ様式」。繊細さ・優美さ・軽快さが特徴。ベルサイユ宮殿の庭園にあるマリー・アントワネットが好んだ場所「小トリアノン」が代表的な建築物です。「ロココ様式」はマイセンでも大流行し、ドイツ人が憧れたフランス宮廷の雅びがマイセンにも持ち込まれ、ミシェル・ヴィクトール・アシェなど、フランスから招かれた芸術家が活躍しました。「宮廷の恋人たち」の群像シリーズ。これは優雅に広がるクリノリン・スカートから「クリノリン群像」とも呼ばれる人形です。そして、フランスの画家のアントワーヌ・ワトーやフランソワ・ブーシェの銅版画のモチーフを使ったテーブルウェアなどの作品があります。また、窮屈な宮廷から離れ田園に遊びたいという気持ちから、「羊飼い」や「ぶどう絞り」といったモチーフも生まれました。この時代にアウグスト強王の孫娘、マリア・ヨゼファがルイ15世の王太子に嫁ぎました。そして、マリー・アントワネットが嫁いだルイ16世の生母となっています。この時に、マイセンとフランス宮廷を結ぶ絆はさらに深く強くなりました。
宮廷の恋人たちの群像シリーズ
原型は、1744年に天才造形師、ヨハン・ヨアヒム・ケンドラー(1706~1775)によって作られたものです。女性のたっぷりとしたスカートの名称「クリノリン」が特徴的です。スカートの豊かなひだや動き、そこに施された繊細な花柄が見所。また当時流行していたインド更紗の影響も色濃く伺えます。(商品番号:左・73061/900300、右・73067/900300)
ワトーの絵柄
フランスの画家、アントワーヌ・ワトーの銅版画を手本にした絵柄。郊外で憩う男女の姿を描き、ソーサーには同色の花柄を配しています。初期マイセンに数え切れない程多くの彫像を遺し、「テーブルセッティング」の基礎となる多くの食器を作り上げたヨハン・ヨアヒム・ケンドラーが、1739年に作りました。また原型には、「ノイマルセイユ」というレリーフを施しました。角笛のような装飾と花が一面にレリーフされ、マイセンの食器類の中でも最もエレガントで古典的な作品となっています。(柄番号:273124)
花瓶「ザクセンのブドウ畑にて。集いの光景」
*世界限定25点
1771年、天才造形家ヨハン・ヨアヒム・ケンドラー晩年の作品としてローマの注文主のために作られた豪華な花瓶の復刻作品です。ルイ16世様式と呼ばれる古典的なフォームの焼成には高度な技術が必要で、豊富に施された23金の豪華な装飾と共に、本作品の大きな特徴となっています。マイセンにおいてもごく僅かな絵付師にしか描くことのできない芸術的な人物画の部分は、ブドウ畑のシーンを描いており、当時貴族の間で好まれた田舎での祭りの様子が表現されています。手本となったのは、フランスの画家、アントワーヌ・ワトーやフランソワ・ブーシェの雅宴画と呼ばれる絵画や銅版画です。(商品番号:51239/29A384)
「羊飼い」シリーズ
左:羊飼いの男
原型は1750年頃、ケンドラーによって作られました。「羊飼い」シリーズは、1738年に初めてケンドラーによって作られ、その後1750年代に宮廷の「サロン」で大変人気を博しました。礼儀や規律の厳しかった当時の宮廷の人々にとって、自由気ままな羊飼いたちの人形を持つことはひとつの楽しみでもあったのです。田園で自由に遊びたいという貴族の憧れから生まれた作品といっても過言ではありません。(商品番号:61075/900300)
右:踊る羊飼いの女
原型は、フリードリッヒ・エリアス・マイヤー(1750-1763)によって作られました。音楽に合わせて軽やかに踊る羊飼いの女性。花模様の衣装がエレガントです。(商品番号:61118/900300)